障害のあるお子さまの将来を見据えた遺言書作成について

先日、遺言書作成についてこんなご相談をいただきました。
障害のあるお子さまの将来を考え、遺言書を準備しておきたいとのご相談です。
遺言書にはいくつか種類がありますが、今回は「自筆証書遺言書保管制度(法務局保管制度)」を利用したケースでした。
近年利用される方も増えている制度ですが、実際には事前準備や注意点も少なくありません。
今回は、障害のあるお子さまがいらっしゃるご家庭における遺言書作成と、法務局保管制度を利用する際のポイントについてお話ししたいと思います。
なぜ遺言書が必要なのか?
相続が発生すると、亡くなった方の財産は、相続人全員で話し合って分ける「遺産分割協議」が必要になります。
しかし、その方の障害によっては話し合い自体が難しくなり、その場合は裁判所が後見人を選んで協議を行う。という事になるのですが、
・自宅は同居している子へ承継したい
・障害のある子には生活資金を確保したい
・配偶者の生活も守りたい
など、ご家庭によって事情は様々です。
そのため、「誰に、何を、どのように承継するか」を事前に整理しておくことがとても重要になります。
法務局保管制度とは?
自筆証書遺言は、自分で作成できる遺言書です。
作成した後の遺言書は自宅保管が以前は一般的でしたが、
・発見されない
・改ざん
といったリスクがありました。
せっかく作成した遺言書が見つからなかったら残念ですよね。
また、見つかったとしてもその後の裁判所への手続きもあり煩雑さは否めません。
そこで始まったのが「自筆証書遺言書保管制度」です。
この制度を利用すると、作成した遺言書を法務局で保管することができます。
メリットとしては、
・紛失防止
・改ざん防止
・家庭裁判所の検認が不要
などがあります。費用も比較的安価なため、近年利用される方が増えています。
ただし「法務局保管=安心」ではありません
ここは非常に重要なポイントです。
法務局保管制度は、あくまで「遺言書を保管する制度」です。
法務局が、
・内容の妥当性
・相続トラブルの有無
・判断能力(遺言能力)
まで確認してくれるわけではありません。
例えば相続発生後に、
「作成時には認知症だったのではないか」
「誰かに誘導されて書いたのではないか」
と争いになる可能性はゼロではありません。
特に、
・相続割合に差がある
法定相続分についてはこちら↓
相続と法定相続分のご説明(ネコ田さん家の場合) – しんもりなおこ行政書士事務所
・障害のあるお子さまへの配慮がある
ケースでは、後から疑問が出ることもあります。
そのため、実務上は「遺言書を作ること」だけでなく、将来的にきちんと機能する内容になっているかを考えることが大切です。
障害のあるお子さまがいる場合に考えたいこと
実務では、単純に「平等に分ける」だけでは解決しないケースが多くあります。
例えば、
・将来誰が生活を支えるのか
・不動産を誰が管理するのか、いつまで管理するのか
・障害年金や福祉制度との関係
・成年後見制度の可能性
など、長期的な視点が必要になります。
また、ご夫婦のどちらかが亡くなった後の「二次相続」まで考えて設計することも大切です。
遺言書はご本人が作成するものですが、障害のあるお子さまの将来を考える際には、
ご自身だけで抱え込まず、ご夫婦で将来について話し合っておくことも大切です。
「誰が生活を支えていくのか」
「住まいをどうするのか」
「兄弟姉妹との関わりをどう考えるのか」
ご家庭によって考え方や状況は様々です。
だからこそ、法律的な手続きだけではなく、ご家族の思いや将来の暮らしも含めて整理していくことが、安心につながっていくのではないかと思います。
実際のご相談で多いサポート内容
今回のご相談でも、メインとなる遺言書の作成の他に
・遺言書保管制度を利用する際に必要となる戸籍等のご案内
・財産目録作成のお手伝い
をさせていただきました。
特に財産目録については、
「何をどこまで書けばいいのかわからない」
「通帳や不動産資料をどう整理すれば良いのかわからない」
と悩まれる方も少なくありません。
実際にお客様からも、
「一緒に整理してもらえて安心した」
とのお言葉をいただきました。
また、法務局保管制度については、
「どこの法務局でも手続きできると思っていた」
「当日でも対応してくれると思っていた」
という方も少なくありません。
実際には、遺言者の住所地・本籍地・所有不動産所在地などによって管轄が決まっており、
事前予約も必要になります。
今回も、
・管轄法務局の確認
・予約方法のご案内
・申請書作成時の注意点
・当日持参する戸籍や本人確認書類等のご説明
・必要書類の取得方法のご案内
などをお手伝いさせていただきました。
制度自体は比較的利用しやすいものですが、
遺言書作成に慣れている方はおらず、初めて手続きをされる方にとっては、
事前準備で戸惑われることも少なくありません。
そのため、少しでも安心して進めていただけるよう、
実際の流れも含めてサポートしております。
公正証書遺言を選択するケースも
法務局保管制度は便利な制度ですが、
・障害のあるお子さまがいる
・不動産が含まれる
・相続人間の負担差が大きい
・二次相続まで考慮する必要がある
といったケースでは、実務上、公正証書遺言をご提案することも少なくありません。
公正証書遺言は、公証人が本人確認や意思確認を行いながら作成するため、
遺言の有効性を巡る争いを防ぎやすいという特徴があります。
もちろん費用はかかりますが、
「将来の家族の負担を減らす」
「遺言を確実に実現する」
という観点では、大きなメリットがある制度です。
まとめ
遺言書は、「財産を分けるため」だけではなく、
「残された家族が困らないようにするため」の準備でもあります。
特に障害のあるお子さまがいらっしゃる場合には、
・誰が支えるのか
・どのように生活を維持するのか
・不動産をどうするのか
を事前に整理しておくことがとても重要です。
ご家庭によって最適な形は異なります。
当事務所では、ご家族の状況を丁寧に伺いながら、
将来を見据えた遺言書作成のサポートを行っております。
遺言書についてご不安がある方は、お気軽にご相談ください。