新人クリエイターに気をつけて欲しい著作権の契約書のこと

こんにちは横浜の行政書士のしんもりなおこです。
今日は著作権を譲渡する際の契約書について気をつけていただきたいことをお話しします。
なので今日のお話は
イラストレーター、フォトグラファー等のクリエイターの方達
その他の自分の著作物を人に譲る事も考えている方に特に見ていただきたいです。

著作物は譲れるの？

著作権を取得するためには特に何の手続きも必要ではありませんが、
著作権は財産権ですから、人に譲渡することができます。質権を設定することもできるんですよ。
その場合、どうやって譲るか？というお話になりますが
「はい、どーぞ」
「ありがとう！」でやり取りも成立しているよう見えますが、
その際は契約書を作成しましょう。
なぜなら？
著作権と一口で言っても支分権と呼ばれる複数の権利が含まれていることから
何を人に譲渡したのかはっきりさせた方が良いからです。
上記のような
「はい、どーぞ」
「ありがとう！」のように所有権だけが移転しても著作権は相手に移らないのです。

気をつけて欲しい契約書の記載①（著作権法２７条、２８条の特掲）

では、契約書を作成しました。
これでバッチリ！
なのですが、どんなつもりでその著作権の譲渡契約をしたのかによって気にしなければならない
ことも変わってきます。
例えば、CHOのイラストの著作権を譲渡するお話しが出た場合とします。

その際の契約書に
「一切の権利を譲渡する」という記載があったとしても、もし譲り受けた方が
CHOの「色を変えたいな」とか、「鈴をつけたいな」「グッズを作りたいな」なんて希望があった場合は
この記載だけでは足りないのです。
「色を変えたいな」とか、「鈴をつけたいな」「グッズを作りたいな」
というのは翻案であり、二次的著作物になっていき、同一性保持権に関わってきます。
同一性保持は著作人格権ですから、特に守られており。
契約書に「27条、28条の権利を含む」の記載がなくてはならず（特掲と言います）
この特掲がなかった場合、「27条、28条の権利は譲渡されなかったんだよね〜」と
推定されます。

なので、著作権者側から見ていて何の説明もなく契約書に「27条、28条の権利を含む」
の記載があったら要注意！！！という事です。

第27条：著作者が専有する翻訳権、翻案権、編曲権、変形権、脚色権、映画化権などの権利
第28条：二次的著作物の原著作物の著作者が有する権利

気をつけて欲しい契約書の記載②（著作人格権の不行使特約）

譲渡契約書に「人格権の不行使特約」という記載がある場合があります。
前の記載で著作権は譲渡できる。って言いましたが、それは財産権のお話でしたね。
人格権は譲渡する事はできません。
しかし、受け取った側は著作物をできれば自由にアレンジしたいですよね。
でも、その際に著作権者が
「その変更は同一性保持権に反する〜！！」って言われたら
自由度は下がりますよね。
なので、「人格権は行使しないでね」という意味合いの一文です。
全然OK〜！！という方もいればそうでない方もいらっしゃると思います。
この記載も要注意！！！という事です。

共同著作物を譲渡する時は同意が必要

共同で著作権を有している場合は自分の持分だけを譲渡することも可能です。
もちろん質権を設定することも可能です。この場合共同の他の人への影響がとても
大きいので他の共有者の同意が必要になります。
また、譲渡ではなくて第三者に利用許諾（ライセンス）することもできるのですが
この場合は合意が必要になります。
同意は一方の意思表示に他方が賛同すること
合意は対等な立場の相手と意思を一致させることです。
似たような言葉ですが意味合いが違ってきますね。

契約書を読み込むのって大変です。
契約書の中のトラップを見つけるのはさらに大変です。
「なんか変だな？よくわからないな？」と思ったら相手の方に確認しましょう。
何も恥ずかしい事はありません。
もし、ご自身だけのチェックじゃ不安だったり、契約書を作成したいという方が
いらっしゃればご連絡ください。
お手伝いいたします！


そしてもの作り手の立場から独り言を言わせていただくと
譲渡と言っても不必要に著作財産権全部を譲渡する必要はないんじゃないかな〜
譲渡するにしても内容・用途別に譲渡を検討しても良いし期限を区切ることも可能
なのだからさ。なんて思います。
だって必死になって作った大切な作品ですからね。

最後までありがとうございました。
しんもりなおこでした。