義務じゃないからこそ不安になる―学童から考える日本版DBS
行政書士として、そして二児の母として、さらに学童の現場に関わる者として、この制度が始まる意義を強く感じています。
先日参加した学童の研究集会では、
発表者の方が「制度への不安はあるけれど、何から手を付ければいいのか分からない」と話されていました。
この言葉は、今多くの学童・教育・保育の現場が抱えている本音ではないでしょうか。
この制度は、現場を責めるためのものではありません。
子どもが安心して過ごせる環境を、社会全体で支えるための仕組みです。
この記事では、日本版DBSについて初めて触れる方向けに、
を、できるだけ分かりやすく整理します。
しかし、事業者が実際に性犯罪歴の確認を“義務として”行うのは 2026年12月から です。
こども性暴力防止法(日本版DBS)とはどんな制度?
■こども性暴力防止に向けた総合的な対策|こども家庭庁
■中間とりまとめ
日本版DBSとは、どんな制度か?というお話ですが、
性犯罪歴の有無を確認する仕組みばかりが目立っていますが、
それは制度の一つであり、
全体としては子どもと関わる仕事をする人を
一律にチェックするだけの制度ではありません。
子どもが日常的に過ごす場所が、
「安心していられる環境かどうか」を
社会全体で問い直すための制度です。
この制度は、イギリスで運用されている
DBS(Disclosure and Barring Service) を参考にしています。
- Disclosure(開示)
- Barring(就業制限)
- Service(制度)
そのため、日本では「日本版DBS」と呼ばれています。
制度の目的は非常に明確です。
子どもが安心して過ごせる社会をつくること。
処罰や排除を目的とした制度ではなく、
リスクを未然に防ぐための仕組みです。
日本版DBSはいつから始まるのか?
こども性暴力防止法(日本版DBS)は、
- 2024年4月に法律として施行しました。
え?もう始まってたの???と思われるかもしれませんが、 - 2026年12月に事業者による性犯罪歴確認が義務化される
スケジュールになっています。
すでに法律は施行されていますが、
事業者が「義務として」確認を行うのは2026年12月からです。
今は「まだ先」ではなく、
準備期間の真っただ中と考える必要があります。
日本版DBSの対象となる仕事 義務と任意の違い
日本版DBSでは、
子どもと継続的に関わる仕事であっても、
すべてが一律に義務化されるわけではありません。
制度上、対象となる仕事は
① 義務とされる業種
② 任意とされる業種
に分かれています。
① DBS確認が【義務】とされる業種
国や自治体が所管し、
制度的に子どもと密接に関わることが前提となっている分野です。
代表的なものとしては、
- 保育所・認定こども園
- 幼稚園
- 小学校・中学校・高校などの学校
- 放課後等デイサービス
- 児童福祉施設 など
これらの事業者は、
2026年12月以降、原則として性犯罪歴確認を行う義務があります。
② DBS確認が【任意】とされる業種
一方で、次のような分野は「任意」とされています。
- 学童クラブ(放課後児童クラブ)
- 学習塾
- スポーツ教室
- 音楽・美術などの習い事教室
- ベビーシッター事業 など
学童クラブも、こちらに含まれます。
なぜ学童は「任意」なのか?
ここで多くの方が、こう感じるのではないでしょうか。
「子どもと毎日関わっているのに、なぜ任意なの?」
「義務じゃないなら、やらなくてもいいの?」
学童が任意とされているのは、
子どもとの関わりが浅いからではありません。
背景には、
- 運営主体が多様(自治体直営・委託・民間)
- 雇用形態が幅広い(正規職員・非常勤・ボランティア等)
- 地域や事業者による運営実態の差が大きい
といった構造的な理由があります。
つまり、
一律に義務を課すことが難しい分野なのです。
しかし現場の感覚としては、
- 子どもとの距離は近い(在籍中は何年も同じスタッフがいます)
- 滞在時間も長い(学校の長期休暇中も通います)
- 日常的な信頼関係がある(親には言えない相談もしているみたいです)
だからこそ、
「任意とされていること自体が不安」という声が出てきます。
任意業種でもDBSを導入することはできるのか?
結論から言うと、
任意業種であっても、日本版DBSの枠組みを使って確認を行うことは可能です。
ただし、義務業種とは違い、
「どう導入するか」「どこまで行うか」を
事業者自身が考え、決める必要があります。
任意業種が今から考えておきたいポイント
① 事業者としての方針を明確にする
- なぜ確認をするのか?
- 誰を守るための制度なのか?
を言葉にして、内部で共有することが重要です。
② 就業規則・内規への位置づけ
任意だからこそ、
- 採用時に確認を行うのか?
- 在職者にもどのように対応するのか?
を内規として明文化しておく必要があります。
③ 職員・保護者への丁寧な説明
説明が不足すると、
- 疑われている
- 監視されている
と受け取られてしまう可能性があります。
目的は処罰ではなく、安心の確保であることを
丁寧に伝えることが欠かせません。
④ 個人情報の適切な管理
性犯罪歴に関する情報は、
極めてセンシティブな個人情報です。
- 保管方法
- 廃棄のルール
を事前に整理しておく必要があります。
学童は「任意」だからこそ、考える責任がある
学童クラブは、DBS確認が義務ではありません。
だからこそ、
- やるか、やらないか
- どこまでやるのか
- どう運用するのか
を自分たちで考え、選び取る立場にあります。
これは大きな負担でもありますが、
同時に、
- 現場に合った形を選べる
- 子どもとの関係性を踏まえた運用ができる
という余地でもあります。
最後に
日本版DBSは、
「確認すること」が目的ではありません。
子どもを守り、
働く人を守り、
事業者自身を守るための制度です。
学童向けの勉強会で実際にどんな質問が出たのか
現場で想定される具体的な悩みについて、
こちらでも共有させていただきます。


